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第4回WEBコラム「今、解決したい業務課題とは」

PCネットワークの管理・活用を考える会(大阪) WEBコラム

<著者略歴>

そのご苦労とノウハウ、笑い、叫び?を執筆された、「システム管理者の眠れない夜」連載をWindowsNTWorld誌(現在WindowsServerWorld)において1996年より開始。
現在も好評連載中であり、その人気から製本化・出版されております。
(株)クボタをご退社され、現在、大阪市立大学大学院 創造都市研究科 都市情報学専攻 博士(後期)課程にて日々研究に明け暮れる毎日。

はじめに

PCネットワークの管理活用を考える会/クライアント管理分科会、関西座長の柳原です。

暑い日々が続いていますが、皆さん、夏ばてなどはしていませんか?このコラムがWebに掲載された頃は、秋らしくなっていることを祈るばかりです。

今年の夏は、最高気温が30℃を超える真夏日が、9月19日の時点で東京で67日、大阪で88日となり、過去最高の2000年、1999年と並んだそうです。熊本では今年の真夏日が100日になっているとか。
つまり西日本では丸々3ヶ月間が真夏日ということになります。情報システムを全国展開している方は、このあたりの事情も頭に置いておいたほうがいいでしょう。多くのビルでは、休日はエアコンが切れますが、そこで動いている部門サーバや電源の切られていないクライアントPCも、この真夏日の影響を受けます。

クライアント管理分科会への衣替え

PCネットワークの管理活用を考える会は、毎年7月1日から翌年の6月30日までを年度にしています。この会の中で、私が座長を務めていた分科会は、前年度までは「IT資産・ソフトウェア管理分科会」という名称でしたが、今年度からは「クライアント管理分科会」と名称を変更し、研究対象を明確に表現するものになりました。

その第1回の関西での分科会は、8月27日(金)に開催しました。この日は、これから1年間の活動方向を探るべく、事務局が準備したアンケート調査結果をもとにした意見交換が活発に行われました。

出席者の約半数は、昨年度から引き続きご参加いただいている皆さんです。それぞれの立場や悩みについての相互理解も進み、分科会としての一体感も醸成されてきたように感じます。

活発な意見交換の中では、各社の実情が浮き彫りになりつつあります。 情報漏えい対策には効果的なツールの導入と同時に、ユーザのモラルや事務所の設備レイアウトなども含めた、総合的な対策が必須であることも明らかなりつつあります。

今年1年の分科会活動へ、多数の皆さんのご参加をお待ちすると同時に、その成果にご期待いただければと思います。

分科会:「今、解決したい業務課題とは」

さて、今回の議題になった調査結果について、その内容と参加者からの意見などについて、私なりにフォローしておこうと思います。まず、調査結果は以下のURLから入手できます。ご興味のある方は是非目を通しておいてください。

IT資産管理・運用に関する調査集計 (PDFファイル:約761KB)

調査期間 2004年6月9日〜2004年7月15日
調査対象 PCネットワークの管理・活用を考える会2004東京・大阪大会」への参加申し込みを行った方
調査方法 上記参加申し込みWeb画面から、単一(一部複数)選択
有効回答数 455名

この集計結果を読むには、注意すべき点がいくつかあります。

  • 回答者は、「PCネットワークの管理・活用を考える会2004東京・大阪大会」への参加申し込みを行った方です。つまり、この大会のテーマである、「情報漏洩/ウイルス対策に必要なクライアントセキュリティとは?」という方面に問題意識の高い方からの回答だ、ということです。
  • 回答は選択式です。このため、この調査結果に現れている項目がすべてではありません。
  • このため、PDFの22ページ目にある「今の業務課題」は、アンケート回答者の目の前にある課題と思われ、この中で「クライアントPCの管理」に関する課題には注目しておく必要があるでしょう。
  • ただし、単一選択式のアンケート結果と22ページ目の「今の業務課題」が、回答者にとって、それぞれどのような重みを持っているのかまでは、この調査からは判別できません。

この集計には、今回の回答者層からみて、一般ユーザの声や、経営者側の声はほとんど含まれていないと考えられます。別の見方をすれば、PCネットワーク管理を実際に担当している方々が現状を鑑みて、将来に向かって危惧している項目がリストアップされている、と考えるべきでしょう。

その意味では、この調査結果に現れた点については、今後の分科会活動のテーマになる可能性が十分にあります。しかし一方、企業や組織として、顧客や社会に対して果たすべき責務、という観点では若干弱い面も危惧されます。このあたりは、次回以降の分科会の中で問題提起していきたいと考えています。

懇親会

懇親会
恒例になった懇親会ですが、今回はその雰囲気を見て頂こうということで、最初に全員で写真をパチリ。ビール、まだー、という声が聞こえてきそうです。
懇親会
約1時間後、本音の情報交換に盛り上がっています。奥に写っているのが分科会事務局の三井氏(右)と秀島氏(左)。いつもお世話になっています。

何をどこまでやっているか

2004年8月27日の第1回クライアント管理分科会(関西)の議事録の最後、「まとめ」のところを見ると、

  • あるテーマに対して、他の会社が「何を」「どこまで」やっているかを知る(ベンチマーキング)のは参考になる。

という文面があります。このような情報は、雑誌などにもケーススタディとして多く掲載されていますので、この分科会として、どのような意味があるのかを、少し考えてみたいと思います。

私の本音を言いますと、特にコンピュータ系の雑誌に掲載されているケーススタディの多くは、以下のような問題があると思います。

  • ハードウェア、ソフトウェアメーカが「こうあって欲しい」と考えているシステムを運用している、と、公には発表しているケース。(実態は別の話)
  • 雑誌の編集方針として、記事にしたいシステムの構成や運用方法に、たまたま当てはまるケース。(記事にしたい、ということと、それが私たちに役立つのかどうかは、別の話)
  • 構築された結果や運用実績はよく報告されるが、それを構築したベンダー側の苦労や、次期リプレース時(次期システムへの移行)にどのような問題が発生するかは、あまり報告されていない。

私は情報システムを議論する場合、必ずその技術的側面とともに、それを導入する意味と導入によって組織がどう変化するのか、将来的にどのような負荷を生むのかを議論しておく必要があると考えています。ところが、情報システムに関わる技術者の多くは、技術的側面にばかり多くの興味が行きがちです。特に情報システムのベンダー側にも、そうした傾向があります。コンピュータ系雑誌に掲載されるケーススタディも、こうした技術者の傾向に合わせているように思います。

こうした問題を意識せずに、技術先行でケーススタディ記事を鵜呑みにしていると、実際の導入・運用段階でとんでもない苦労を背負い込むことになります。私自身、過去20年ほどの間に、何度も経験しています。

こうした問題をしっかり意識し、巷に溢れているケーススタディを見極めできるようなスキルが必要だと思います。クライアント管理分科会での、参加者どうしの本音の議論が、こうしたスキルの育成に役立つことを目指したいと思います。

自己紹介

パーソナルコンピュータとの付き合いは1979年のNEC社製PC-8001から始まっています。
1985年から当時はオフコンと呼ばれていたIBM社のシステム36を使って、機械製造メーカでの社内用生産管理システムの構築に関わりました。言語はRPGでした。 1990年ごろから社内にパソコン通信やLANを導入してきました。この頃からネットワーク上でのコミュニケーションに関わっており、1993年以降はインターネットとWindows NTによる社内業務システムの開発、運用を行ってきました。
1996年からはインターネット上でのコミュニティであるNT-Committee2に参加し、全国各地で勉強会を開催しています。
http://www.hidebohz.com/Meeting/
1997年からはIDGジャパンのWindows NT World誌に「システム管理者の眠れない夜」というコラムの連載を始めました。連載は既に7年目に突入し、誌名は「Windows Server World」に変わっていますが、読者の皆さんに支えられて今でも毎月、締め切りに追われる日々が続いています。
連載から生まれたメーリングリストもあります。ご参加はこちら。お気軽にどうぞ。

「システム管理者の眠れない夜」イメージ「システム管理者の眠れない夜」イメージ

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