皆様、お久しぶりです。ほんとうはもっと早くコラムを掲載したかったのですが、もう6月、梅雨の時期になってしまいました。今年の4月以降、細々とした仕事が増えたのが原因です。また、大学の非常勤で新しい科目を担当したため、その講義準備に追われたことも影響しています。しかし、新たな勉強ができるチャンスともいえるので、幸せなことだと思っています。
もともと私は、締切りに追われないと仕事ができないタイプなのです。自分のスケジュール表やTo Doリストに締切り日が入っていないと、気が抜けてしまうのですね。また、人から頼まれた仕事は基本的に断らないことにしていますから、ますます忙しくなります。因果な性格だと思いますが、仕事を依頼されているうちが花だと思って、これからも頑張っていこうと思っています。
すでにWebでは案内が掲示されていますが、今年もPCNW2010大会の季節がやってきました。例年のとおり、東京(7/2)と大阪(7/9)の2ヶ所で開催されます。今年のパネルディスカッションのテーマは、なんと、「クラウドで情報システム部門をどう変えるか!?」というものです。
クラウドを使ってコストダウンできるのか?どんな仕事がクラウドに移行できるか?などといったテーマはありふれていますし、すでに多くの議論があることでしょう。しかし今回のテーマは違います。
パネラーとして登場する分科会座長の皆さんの顔ぶれを見ると、開発系よりも情報システム部門の方が多いのです。そうしたメンバーが「情報システム部門をどう変えるか!?」というテーマで話しあいます。すなわちこのテーマは「情報システム部門の自己改革を考える」ことに他なりません。そのための手段として今、注目されている「クラウド」に目を向けたのが、今回の大会のテーマとなっているわけです。
開催日程は目前に迫っていますが、皆様もぜひご参加ください。会場でたくさんの皆さんとお会いできることを楽しみにしています。私の顔を見つけたら、声を掛けてくださいね。
さて、このコラムでも少しクラウドについて考えていることをお話しましょう。
1990年代以降、情報システム部門はオープン化の波にさらされ、自らサーバとクライアントのハード・ソフト環境を構築し、ネットワークの配線にまで手を出していました。ある意味では自給自足の牧歌的な光景だったと思います。
しかし、サーバの利用度が高まるにつれて、その保守作業は夜間や休日に行うしかなくなりました。社内の基幹業務を担うサーバでは、その信頼性が問題になります。そのため、サーバの2重化、ネットワークの2重化、ストレージのRAID6化などが行われてきました。
こうした事態を経営側から見た場合、どうも歯がゆいものなのです。例えていえば、社用で使う車はリースやタクシーで良いにも関わらず、なぜか整備工場とエンジニアまで社内に抱え、同時に、1台で十分なのに予備の車まで買ってあるようなものだからです。
その割には、時々サーバが壊れて情報システムが止まったりするのですから、情報システムの事を真剣に考えている経営者であれば、この現状を改革したいと考えるのが普通でしょう。そこでクラウドに注目が集まるのは自然な事ですね。
今年の5月に、東京ビッグサイトで開催されていた「クラウドコンピューティングEXPO」を見てきました。そこでの個人的な印象では「クラウドに関係しそうなモノを何でも並べてみました」というものでした。どう見ても単にASPでしょう?というアプリケーションやレンタルサーバとどうちがうの?という展示も目立っていました。
本来のクラウドのメリットは、その信頼性とスケールアウトの容易性や迅速性だと思うのです。信頼性が高ければ、サーバの保守に時間と金を掛ける必要が無くなります。スケールアウトが容易であれば、システムの最大負荷に合わせた余計な投資が不要になります。
もしこの2点について、手持ちのサーバでも問題が無いのであれば、何もクラウドを使う必要はないと思います。既に稼働しているシステムを大切にすべきだと思います。次回のシステム更新のタイミングで、再考すれば良いだけのことです。
サーバ上のデータが重要性を増すに従い、バックアップを確実に行うことが求められるようになりました。最初の頃はテープバックアップで十分だったのですが、データ量が増大していくと、フルバックアップが夜間だけでは終了しないような事態に陥るサーバも増えました。このため、HDD to HDDでの常時バックアップに頼る組織が増えています。しかし、情報システム監査によってデータの安全な保管に問題がある、と指摘されることもしばしばです。
そこで、クラウド側のストレージにバックアップしてはどうか?というアイデアが出てくるのですが、これもまた問題があります。バックアップデータの所在が特定できないことが多いからです。国や住所を特定できたとしても、実際にどのハードディスクにデータが保存されているのか、システム監査人から問われた時に答えられる必要があるでしょう。
このあたりの問題に答えることができるバックアップ方法が必要なはずで、同時にあまりシステム管理者の手を煩わせることなく、確実にバックアップできる手法が求められているわけです。何がなんでもクラウドへ、という流行に惑わされないようにしてほしいものです。
データのバックアップといえば、昨年でしたか、クオリティ社のどこかのイベントで、QQR(Quality Quick Recovery)というバックアップ製品の開発が進んでいるという話を聞きました。どうやらリリースが近いようで、今年の7月に登場するというニュースがBCNに流れていました。
http://biz.bcnranking.jp/article/special/1006/100624_123154.html
今回のPCNW大会ではこの詳細も聞けそうですので、要チェックですね。今まで、本格的なバックアップツールというと、ほとんどが海外製だったり、お値段も馬鹿にならないものが多かったのですが、QQRはそうした常識をひっくり返してくれるのではないか?と、私も密かに期待しているのでした。
パーソナルコンピュータとの付き合いは1979年のNEC社製PC-8001から始まっています。
1985年から当時はオフコンと呼ばれていたIBM社のシステム36を使って、機械製造メーカでの社内用生産管理システムの構築に関わりました。1990年ごろから社内にパソコン通信やLANを導入してきました。この頃からネットワーク上でのコミュニケーションに関わっており、1993年以降はインターネットとWindows NTによる社内業務システムの開発、運用を行ってきました。
1996年からはインターネット上でのコミュニティであるNT-Committee2に参加し、全国各地で勉強会を開催しています。1997年からはIDGジャパンのWindows NT World誌に「システム管理者の眠れない夜」というコラムを執筆し、2009年まで10年以上の長期連載となりました。それらをとりまとめて出版もされています。
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