PCネットワークの管理活用を考える会/クライアント管理分科会、大阪座長の柳原です。 この連載ではクライアント管理分科会の活動の様子をお伝えすることが多いのですが、今回は趣を変えて、去年からの不景気についてお話したいと思います。
不景気というものは定期的にやってくるもので、筆者も過去に何度か翻弄されています。
筆者が就職したのは1979年ですが、1973年には第一次オイルショックがあり、続いて1978年には第二次オイルショックが起こっていた時代です。 物価が高騰し、企業は採用数をめいっぱい減らしていた時期で、就職戦線は氷河期。学生にとっては、とにかくどこでもいいから採用してくれればラッキーという時代でした。
ちなみに、世界恐慌が起こったのは1930年代ですから、そこから40年後に第一次オイルショックが起こっている計算になります。 第一次オイルショックから20年たってみると、1992年、今度は土地バブルの崩壊がやってきました。 そこから10年が過ぎて起こったのはITバブルの崩壊です。どんどん間隔が短くなっていますね。
40年、20年、10年と来たので次は5年後には何が起こっているでしょうか。 みなさんもご存じのとおり、2007年夏には米国でサブプライムローン返済の延滞率が上昇し、住宅バブルがはじけました。
このように書くと、将来は毎年のようにバブル崩壊が起こるような気がしてぞっとしますが、実際にそうなっているのです。 2000年以降は世界中のどこかでバブルが弾けているといっても間違いではありません。石油バブルの崩壊や、中国での不動産バブル崩壊は現在も進行中です。
こうして私は、1980年代から現代に至る約30年の間、常に不況の波を見てきました。 今回の金融危機も、正直いって「また来ましたか」という感覚ですし、死ぬまでには、何度かの危機が来るだろうとも思っています。
就職氷河期になんとか会社に潜り込んだものの、会社の景気が悪くて何度も辛い思いをしています。 配属された工場で技術スタッフとして働いていたわけですが、仕事は生産ラインのコストダウンと人員の合理化対策、そして経費節減ばかり。 もちろんこれも立派な仕事だと思いますが、ネタに尽きてくると閉塞感に苛まれます。
少なくとも私の経験では、経費をこつこつ節減する対策の積み重ねで、企業活動が再生できたような話は聞いたことがありません。 経費節減が叫ばれるのは、会社の業績が低迷していることを周知させるための、ほとんど精神論に近いものです。 本当は、もっとドラスティックな対策が必要になるはずです。
極端に考えると、工場のスタッフがいなくても生産はできるのです。 スタッフを首にすれば、即効性のあるコストダウン対策になります。 筆者が勤務していた工場では受注生産を行っていました。このため注文が来ると、製造するための設計を行う必要があります。 しかし、この設計が自動化できれば設計担当者は不要になります。
もちろん、技術スタッフをゼロにしてしまうというのは、中長期的には困ることになるので現実的ではありません。 しかし、ドラスティックな対策というものは、こうした極端な思考から生まれてくるものだと思うのです。
極端な思考というと、なにやら現実離れしていたり、社内にある様々な規則を破ることに繋がりかねない、と思われるかもしれません。 しかし、あくまでも「思考」です。それを行動に移すことはまた別の問題です。
例えば、企業内で人手のかかっている仕事を、止めてしまうとどうなるかを考えてみる。 会議室というものを無くしてしまったらどうなるかを考えてみる。そうすると、何が困るのか、どんな利点が出てくるのかを考えてみるのです。
陳腐に聞こえるかもしれませんが「ペーパーレス」というのもその一つです。 報告書や会議資料、伝票、集計表などから一切の紙を排除することは、単にエコなだけではありません。 コピーが不要になり、配布された側でもファイリングが不要になります。
大きさの固定されている「紙」と、拡大・縮小・スクロールが可能なコンピュータ画面とでは、資料作成の自由度が全くちがいます。 ユーザがA3用紙に書きたい内容を詰め込もうとしてレイアウトに時間をかけたりすることもなくなります。
紙を無くしてしまえば、コピーの利用数も激減します。思い切って複写機を捨ててはどうでしょうか。 どうしてもコピーしたいときは、スキャナとプリンタがあればいいのですから。会議にはプロジェクタとグループウェアに繋がるパソコンで十分です。
社内でファイルサーバやグループウェアサーバを動かしているのなら、それも止めてしまうのも現実的です。 社内でサーバを動かしているから、運用や保守に人手がかかるのです。社員が50人でも200人でも、社内サーバの運用コストは大して変わりません。
Exchange ServerやLotus Notesなどのホスティングサービスを使うと、運用担当者をまったくのゼロにすることはできませんが、サーバのセキュリティやクラッシュに気を使ったり、データバックアップや無停電電源装置の保守に気を遣うこともなくなります。小規模の会社なら、真剣にGoogleAppsなどを利用することを考えるべきでしょう。
現状の延長線上で経費節減を考えるのは容易です。しかし、より大きな効果を狙うのであれば、まず最初に現状の仕事を否定してみること。ここから始めることをが必要です。
パーソナルコンピュータとの付き合いは1979年のNEC社製PC-8001から始まっています。
1985年から当時はオフコンと呼ばれていたIBM社のシステム36を使って、機械製造メーカでの社内用生産管理システムの構築に関わりました。言語はRPGでした。
1990年ごろから社内にパソコン通信やLANを導入してきました。この頃からネットワーク上でのコミュニケーションに関わっており、1993年以降はインターネットとWindows NTによる社内業務システムの開発、運用を行ってきました。
1996年からはインターネット上でのコミュニティであるNT-Committee2に参加し、全国各地で勉強会を開催しています。
http://www.hidebohz.com/Meeting/
1997年からはIDGジャパンのWindows NT World誌に「システム管理者の眠れない夜」というコラムの連載を始めました。連載は既に7年目に突入し、誌名は「Windows Server World」に変わっていますが、読者の皆さんに支えられて今でも毎月、締め切りに追われる日々が続いています。
連載から生まれたメーリングリストもあります。ご参加はこちら。お気軽にどうぞ。
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