AIで代替できにくいソフトスキルを鍛えよう!

2026年1月5日

皆さん、新年明けましておめでとうございます。この一年が皆様にとって愛溢れる素敵な一年になることをお祈りします。

さて、昨年末に「Society 5.0時代のデジタル人材育成に関する検討会」の座長と話をする機会があった。座長曰く、検討会ではDXに必要な人材をスキルベースで明確化、見える化する必要性を訴えたかったのだという。

https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/society_digital/index.html

日本企業はDX人材が足りないと言われるが、ではどういった人材が必要なのかと問うても、明確な答えが返ってこない。それでは人材を採用したり育成しようとしても、その人材をちゃんと定義できてないわけで、うまくいくわけがない。だからこそDXに必要な人材はどんなスキルを持つべきなのかということを明らかにしたわけだ。

ちなみに、日本企業の人事においては、ある人が昇進しても、それはなぜなのか理由がわからないことも多い。それくらい、ゼネラリストを重用する日本企業の人材に対しての認識は玉虫色でいい加減なところがあるわけだ。だからこそスキルベースで必要な人材を見える化していくことは大事なことだとは思う。

ただ、今後AIがますます進化していく中で、例えば座学で学べるようなスキルはAIが学習して人間を凌駕するようになるのではないだろうか。

AIが進化しても代替できない人間の仕事とはどんなものだろうか。よく言われるのが以下の三つの仕事である。

一つはデザインや構想を行う仕事である。「何を目指すのか」を描く仕事だ。例えば経営戦略、プロダクト設計、事業づくりなどのいわゆる「上流」の仕事になる。

何かを目指すためにはその価値を見定めることが必要である。AIは計算はできても、何が正しいのか、何を選ぶべきかという価値判断そのものはできない。例えば利益を取るのか、雇用を守るのかという答えのない問いに決着をつけることはできないわけだ。企業の理念・ビジョンを策定したり、どの事業を残し、どれを捨てるかを決めるような経営判断は人間の仕事である。不完全情報の中で覚悟を持って決めきる「意思決定力」と共に、正解探しではなく、「何を問うべきか」を定める「問いを立てる」仕事も人間にしかできないものだ。

二つ目はマネージメントである。これは人を動かす仕事で、組織運営、リーダーシップ、人材育成、コーチングなどの仕事になる。つまり「人と人の関係を扱う」仕事である。

人間は感情を持つ社会的存在で、AIは感情をシミュレーションすることはできても信頼を築いたり、相手の心を変えたり、対立を和解させたりすることはできない。本物の対人関係を形成する力は人間だけのものだ。言葉だけではなく、人間の表情、沈黙、文脈、人生背景まで含めての人間としての相手に共感し、信頼を構築し説得できる力は人間だけのものだ。

三つ目が「責任を引き受ける」仕事である。AIは提案したり予測することはできても、責任を引き受けることはできない。経営者、医師、裁判官などの仕事だ。法的にも倫理的にも、社会的責任を個人の名で背負えるのは人間だけである。

こう見てくると、ITに関連する仕事においては、仕事の下流のエンジニアリングや作業系の仕事はAIに置き換えられ続け、上流の要求分析や設計、そしてプロジェクトのマネージメントが人間の仕事になってくるはずだ。企業のITの内製化はますます加速し、ITベンダーの多重請負構造も崩壊していくだろう。

そして、ITが対象とするビジネスが人間が関与して行われる限り、対人関係や問題解決、リーダーシップなどのソフトスキルが、専門知識や技術などのハードスキルに比べてますます重要となるのは間違いない。

こうしたソフトスキルは一朝一夕で身につけられるものではなく、意図的な練習と経験の積み重ねで伸ばしていくものだ。まずはファシリテーション、コーチング、デザイン思考、システム思考などを学び、それを実践しながら振り返り、改善していくわけだ。もちろん、人の価値観を理解し、物事の本質を捉えることができるよう、日頃、哲学・心理学、歴史や文化などリベラル・アーツを学ぶことも欠かせない。

今年一年、ぜひ皆さんのソフトスキルがレベルアップすることを願っています!

寺嶋 一郎 PCNW幹事長
TERRANET 代表

1979年3月に東京大学工学部計数工学科卒業。その後積水化学工業に入社し制御や生産管理システム構築に従事。MIT留学を経て、(株)アイザックの設立に参画、人工知能を応用した積水化学の工業化住宅のシステム化に貢献する。
2000年6月に積水化学に戻り情報 システム部長として積水化学グループのシステム基盤の標準化やITガバナンスの改革に取り組む。2016年3月に退職し、現在、TERRANET代表。

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