ハンドパワーで築く信頼

2025年8月18日

新しく座長となりました、積水ポリマテックの森です。これからの情シスの在り方についてお話ししたいと思います。特に、ユーザーとの信頼関係を築くためのコミュニケーションの重要性に焦点を当てたいと思います。私の経歴を簡潔に書くと、元々は社外で開発系のお仕事をしておりましたが、自社に戻ったタイミングでインフラ系の情シスにジョブチェンジしました。それから10年以上経ちますが、いまだに社内の雑多な情シス系業務を粛々と片付けている状態です。

社内情シス担当、特にインフラやPC管理を担当していると、トラブル対応でパソコンの面倒を見るのは日常茶飯事です。犬が歩いて棒にあたるより高確率で、情シスが歩くとトラブルに遭遇している気がします。

ある日、ユーザーがどんな操作をしても「電源が入らない!」というパソコンを持ち込んできました。数秒パソコンを眺め、直感的に解決策が思いつきます。しばらく電源ボタンを長押しし、ボタンを離すと、あら不思議。メーカーロゴが表示され、パソコンが無事に起動しました。

知らない人が見たら、魔法でも使ったように見えるのでしょう。ユーザーは狐につままれたような表情をしていますが、私が「ハンドパワーです」と説明すると、何故か納得したというか、腑に落ちた顔をしてくれるのです。パソコンの技術的な知識があれば、CMOSクリアが原因だと想像できるでしょうが、そのことをユーザーに説明してもあまり意味がないと思っています。ユーザーは原因を知りたいわけではありません。情シスであれば元の状態に戻してくれると信頼して声を掛けてくれているのです。(原因が知りたければ、その後に聞いてくるし)こんなトラブルの時には無駄に時間を使わず、すぐに情シスを呼んでもらったほうが、お互いのためになるということを「ハンドパワー」という言葉に託して、感覚的にお伝えしているつもりです。

ちなみに、「ハンドパワー」という単語自体を知らない方が一定数いらっしゃいます。ジェネレーションギャップを感じてしまいますが、そんなときには、そのギャップを埋めるのも仕事の楽しみの一つだと思っています。

また、別の日には海外出張に向けて、会社で契約している海外用Wi-Fiルーターの貸出依頼がありました。最近は、申請した方のITスキルを勝手に判断し、スキルの高い方には空港でのレンタルをお勧めしています。(その方がコスト削減になり、私の仕事も減りますので)

ITスキルが低い方には、会社にあるWi-Fiルーターの在庫をお渡ししていますが、ITスキルが低い方に限って急な出張や、運悪く在庫がないことが多くあります。レンタルの申し込みから端末の受取、帰国後の返却までPDF1枚にまとめた資料では、なかなか理解していただけず、出国ゲートの最寄りの受取先を地図付きで詳細に説明したり、海外旅行保険を法人契約しているのでWi-Fiルーターの補償オプションは無駄金になることをご理解いただけるまで何度も説明したり、とにかくスキルの低い方の対応は何倍も手間がかかることは、同じ情シス界隈の方であれば痛いほど理解いただけるのではないかと思います。

そんなときには説明を省略せず、回答を小出しにせず、全て提示することで、安心して受け入れてくれることが多いと思います。相手が見えていないもの、不安に感じているもの、そんなことを先回りして準備することが結果的には一番近道で、信頼関係が築ける方法だと考えています。ホント、人間関係というのは重要なものですよね。

このように、社内情シスの役割は単なる技術的な問題解決にとどまらず、ユーザーとのコミュニケーションが非常に重要であることを実感しています。専門的な知識はもちろん必要ですが、それ以上に大切なのは、相手の立場や理解度に合わせた説明ができる能力です。

「ハンドパワー」という言葉が持つユーモアは、難しい技術的な説明を避け、ユーザーとの距離を縮める手段として機能しています。トラブルを解決する際には、技術的な解決策だけでなく、相手の気持ちや状況を理解し、適切なコミュニケーションを図ることが、より良い関係を築く鍵となります。

また、Wi-Fiルーターの貸出のような具体的な業務においても、相手の理解度に応じた適切な対応が求められます。確実にサポートするためには、技術的な知識だけでなく、人との距離感やホスピタリティについて、日々磨きをかける必要があると思います。

そのためにも情シス担当者には、社内に閉じこもっていては得られない知見を、社外の勉強会で幅広く吸収してほしいと思います。特に、PCNWの勉強会は、最新の技術やトレンドを学ぶ絶好の機会です。参加することで、他社の情シス担当者とのネットワークを広げ、さまざまな視点からの知識を得ることができるでしょう。

今後も、柔軟な対応力とコミュニケーション力を活かし、ユーザーが安心してIT環境を利用できるよう努めていきたいと思います。情シスは、ただのサポート役ではなく、ユーザーとの信頼関係を築くパートナーです。そのため、情シスの皆さんがその重要性を楽しみながら実感できる勉強会を共に創り上げていきたいと考えています。今後ともPCNWの勉強会をよろしくお願いいたします。

森 厚 積水ポリマテック株式会社
システム企画課

制御系ソフト開発会社に入社し、主に鉄道関係の制御ソフト開発にSE・PGとして従事する。
2004年からは車載機器メーカーに出向し通信制御のソフト開発に携わるが、出向先の業務縮小のため2013年に帰任。
社内では情シスとしてセキュリティとインフラを担当。現在は総務人事部に席を置き、社内IT教育やグループウェア等の導入はじめとした、ITを用いた業務効率化を担う。

© PC・ネットワークの管理・活用を考える会