2025年4月1日
2025年4月1日
会社には解決しなければならない様々な問題があります。
そうした問題を解決するためには、問題の対象となるものを可視化することが、問題解決への近道になることが多いと思います。
だいぶ以前ですが、日本にもBPR(Business Process Reengineering)と呼ばれた業務改革が流行りましたが、多くの日本の企業は成果を上げることができずに挫折しました。その原因は業務プロセスの可視化が十分にできなかったためではないかと思います。
その後、日本でRPAが流行った際も、パートのおばさんがやっている作業をそのままRPA化してしまい、野良ロボットの増加を招いたということもよく聞きます。まずは業務プロセスを可視化し、RPA化しようとするその業務が本当に必要で、そのやり方が業務全体から見て最適なのかという判断をした上でRPAの導入をすべきだったのではないでしょうか。
欧米では業務プロセスを可視化して分析し、継続的に改善・最適化していくことをミッションとしたプロセスオフィスという部署を持つ企業が多くあります。そこでは常にデジタル化も含めて、ビジネスプロセスの改善を行なっているのです。
さらに、欧米ではビジネスそのものをいろんな視点で可視化することにより、ビジネスの全体最適を行なっています。IPAのDXスキル標準で脚光を浴びている「ビジネスアーキテクト」という人材は、欧米では企業全体の全体最適を企画・推進する人たちのことのことを指します。ビジネス全体をいろんな視点で可視化したものを「ビジネスアーキテクチャ」と呼び、そうした可視化をしながら、End to Endでビジネス全体の何が問題で、どうすれば顧客価値を上げられるかということを常に考えている人たちのことをビジネスアーキテクトと呼ぶのです。日本企業の経営企画部や経営戦略部などが本来やるべき仕事をやっている人たちのことですね。
いずれにせよ、さまざまな可視化は多くのメリットをもたらします。例えばIT部門においても、全社のIT資産やIT費用の可視化は大事です。何にどれくらいのコストをかけているのかを常に可視化しておきたいものです。また、全社のITアーキテクチャの現状、そして目指す姿を可視化しておくことで、個々のシステムを更新するごとに、あるべきITアーキテクチャに近づけていくことができます、そして大変ではありますが、全社の業務プロセスの可視化を行うことができれば、BPRも進むでしょうし、IT部門の価値も上がると思います。なぜITを導入し業務改革をするのかを現場に説明する際、全社の業務フローを見せながら、どこをどう変革したいのかを説明することで、自分たちの個別の業務しか知らない現場の人たちにとって非常に説得力があるからです。
そして可視化は、ビジネスや業務にとどまらず、組織のあり方や人事制度などにも有効です。仕事の目的と内容、仕事を構成する職務や役割とそれに必要なスキル、さらには社員一人ひとりが持つスキルも可視化するのです。そして各仕事に必要な職務に応じて、必要なスキルを持つ人をアサインするわけです。そうすることで、どういう人材が足りないのか、これからの人材育成の方向などを共有することができますし、うまく活用すればジョブ型に近い日本流の人材マネージメントを行うこともできるのです。
さらには会社はもちろんのこと、部門のミッションやビジョン、バリューなどもきちんと具体的な文言にして可視化することも大事です。IT部門の多くの仕事やプロジェクトの優先順位は、そうしたミッションに照らし合わせることで決めていくべきです。さらには具体的な実践ができる行動指針を作り、管理者から率先して行動することで、目指す組織風土を作ることに大きく貢献するはずです。
ちなみに、私の現役時代の話ですが、会社でタクシー券を誰がどれくらい使っているかを公開したことがあります。そうすると、どうでしょう、タクシー代がガクンと減ったのです。なので、IT部門として会社支給携帯の費用について、誰がどこに電話を掛けて、どれくらいの電話代を使っているのかを可視化し、管理者が見ることができるようにしました。すると、携帯使用料が大きく減ったのですね。それくらい可視化は大きな力を持っています。
ぜひIT部門の皆さん、できるところから可視化を進めて、より会社に貢献できる部門へと変身していただきたいと思います。
寺嶋 一郎 | PCNW幹事長 TERRANET 代表 |
1979年3月に東京大学工学部計数工学科卒業。その後積水化学工業に入社し制御や生産管理システム構築に従事。MIT留学を経て、(株)アイザックの設立に参画、人工知能を応用した積水化学の工業化住宅のシステム化に貢献する。
2000年6月に積水化学に戻り情報 システム部長として積水化学グループのシステム基盤の標準化やITガバナンスの改革に取り組む。2016年3月に退職し、現在、TERRANET代表。
〒102-0083
東京都千代田区麹町3-3-4 KDX麹町ビル(クオリティソフト株式会社内)
TEL:03-5275-6121 E-mail:bunkakai@pcnw.gr.jp
© PC・ネットワークの管理・活用を考える会