2024年11月13日
2024年11月13日
●はじめに
ベンチャー界隈や中小企業では、メールやドキュメント、スプレッドシートも使えるからということで、Gで始まる某サービスを使っているところが結構多いのではと思います。ずっとMのサービスを使っている方はあまりピンと来ないかもしれませんが、今回はそのGで始まるサービスのオンラインストレージに関する話が中心となります。
●ファイルサーバーを使っていた時代
だいぶ時は遡って、2000年代や2010年代はじめは、いわゆるファイルサーバーが全盛期でした。ファイルサーバーのOS自体はLinux系でもWindows系でもどちらでもよく、使っているパソコンからは、普段どおりファイルを保存する、開く、編集する、削除するような感じで、利用していた方が多かったと思います。また、現在でもそういう利用は普通にあるかと思います。
なので、パソコン自体を初めて使います、みたいな方でない限り、ファイルの保存方法というのは、あえて教えてもらうなんてことはなかったと思います。自分が社会人になってからは、そういう教育をしたことはありません。
※もしかしたら、今は、とあるネットの記事だとスマートフォンだけで資料を作成する、つまりパソコンを使わない人も一定数いるそうなので、その意味だと、2024年の今は、本当に教えないといけないこともあるかもしれませんね。
そして2010年代も少し進んだ頃(具体的に広まった時期は自分も定かではないです)、いよいよSaaSの代表格であるGで始まるサービスがドンドン利用されていきます。ブラウザ上でファイルが作れる、操作出来る、そして、ダウンロードしてパソコンでも開けて使える、という画期的なもので、今では多くのユーザーが使っているでしょう。
雑談として、そのサービスがやはり秀逸なのは、メールサービスとともにオンラインストレージも使える、ファイルの作成等も出来るところでしょう。つまり、それさえ契約してしまえば、基本的なビジネスが開始出来る、というところに最大の利点があります。ベンチャーやスタートアップでビジネスを始めるという会社のほとんどは、そのサービスを利用しているはずです。
それまでは、メールはメールサーバーを立てる、ファイルの保存はファイルサーバーで、というのが主流だったので。今ではサイバーセキュリティーのことを思えば、自前でメールサーバーを構築する企業はほとんどないでしょう。(そもそも構築できる技術者がほとんどいないのではと思っています。なお、マネージドサービスでの構築はそれには含めない)
●ちゃんとした使い方って習った?
そこで、改めてその利用者の皆様に聞きたいことがあります。そのサービスにはオンラインストレージの機能もあります。そのオンラインストレージへの保存の仕方や概念ってちゃんと学びました?ということです。
たぶん、NOです。というのも、保存は直感的に出来るものだからです。共有も簡単にできます。ですので、習わなくても使えてしまうのです。その結果、おそらく中小企業で情シスがいない場合で、このオンラインストレージのサービスを数年以上使うとどうなるか、答えは簡単です。ほとんどの場合は、言葉を選ばずいうと、ゴミ屋敷になっています。ただ、厄介なのは、従来のファイルサーバーと違ってそのゴミが見えない点にあります。ファイルサーバーの管理者なら、そのファイルサーバーのルートにさえいけば、全部辿れるので、全容を見ることはそんなに難しいことではないです。
しかし、Gの当該サービスは最上位の権限をもっていたとしても、全容を把握することはできません。そして、そのサービス独特な概念としてオーナーというものがあり、オーナーでなければ、ファイルの移動すらままならないこともあります。そして、アカウントを削除すると、そのオーナーのファイルは引継ぐことをしなければ消えてしまいます。また引継いだとしても、引継いだ側はしらない間に大量のファイルを秘伝のタレのごとく蓄えていくので、「これは何のファイルだ?」みたいなことは部長やマネージャーになると日常茶飯事になります。
パソコンとファイルサーバーのようなことで例えるならば、Aさんのパソコンのローカルのファイルシステムにフォルダが作成されるが、そのフォルダの実体はBさんのパソコンにあって、そこにCさんしかアクセスできないようなファイル(※)を作成する、みたいなことが数千、数万ファイル・フォルダの単位で行われているのです。こう表現すると、おぞましい感じがしますが、いかんせん目に見えないので、全く分からないんですね。
※なので、「いらないなら、フォルダ毎消してしまおう」というようなことも、実はできないことが多いのです。
●そういうネタもネットにはない
ではどうやって本来使っていけばいいのか、ということもあって良いはずですが、これがびっくりするぐらいインターネット上には情報はありません。というのも、この現象は企業用のサービスなので、一般コンシューマー向けでの同じような機能はあってもそういう問題に直面することがないからです。企業の例えば、情シス系が発信すればいいでしょうが、中小企業の情シスでそんなことをしている暇がないのは、想像に難くないでしょう。
一応、サービス提供会社が公開しているリファレンス的なものもありますが、まあ、分かりづらいです。また個別的な動きについてはそこまで検証していないこともあるので、自分はサポートに都度聞いている状態です。
また、直感的に使えることもあるので、当然、こういったことについて、お金をとって教えるような企業もほとんどありません。よって、ほとんど発信もされないため、そのあたりのリテラシーが上がることもありませんので、情シスがいない会社で、初めて情シスが着任してほぼ確実にやることは、そのストレージ内の情報整理、ということになります。平たく言えば、論理的なゴミ屋敷の掃除、ということになります。
なお、運営委員である自分が所属している会社も漏れなくゴミ屋敷状態でした。ただ、数年かけてようやく9割ぐらいは片付いた感じです。新しく入ってきた社員にはきちんとルールに則った保存をさせているので、散らかるにしても、各個人でお掃除が簡単に出来るレベルです。意外とこのリテラシーは中々育たないと思うので、情シスも辛抱強くやっていく必要があります。
身近すぎるぐらいのサービスですが、(大企業はさておき)おそらく中小企業レベルでは同じ悩みで苦しんでいる、もはや、なんともできないから、見えないゴミ屋敷なら放っておこう、と覚悟を決めている情シスもいると思い、今回はこういう話にしました。最初から整理されている会社に遭遇したら、たぶん、小躍りするんだろうな、と思いました。世の中から、散在されたデータによるゴミ屋敷が消えることを願わんばかりです。
PCNW運営委員より寄稿 |
大手ITベンダー等でITインフラ設計・構築・保守・運用等を幅広く経験後、「ぼっち情シス」や「セキュリティエンジニア」として、PCトラブルから情報セキュリティ監査対応まで幅広く担当。
現在は、「ぼっち情シス」として活動中。
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