情シスのヘルプデスクを軽んじるなかれ

2023年6月7日

●ヘルプデスクはスキルがいる?いらない?
この記事を書いている執筆者も、複数の企業で情シスの経験があり、情シスの仕事の1つに社内のITサポート、ヘルプデスクが100%と言って良いぐらい含まれる。ヘルプデスクと聞くとスキルを要しない、マニュアルだけ見て対応するような初心者向けのような感じの役割に理解されがちになるが、それは企業規模や環境によって大きく異なってくる。大企業で行うようなそれとベンチャーや中小企業のそれとはまるで異なることが多い。

●マニュアルやナレッジが豊富の大手
仮に1000人の利用者が1人1台パソコンを貸与された場合を想定してみよう。その中で、パスワードを忘れた、規定回数以上うち間違えた、等のようなことが発生する確率が5%だとした場合、50人が問い合わせをする。その回答を、例えば担当者がナレッジもなく回答をすると、全部キレイに回答するのは難しくなってくる。よって、回答を平準化、品質を維持する為に、マニュアルやFAQが登場してくる。パスワード以外にも無線がつながらないとか文書作成ソフトのライセンスとか、様々なよくある問い合わせが登場することになり、そういったものを作成しないとサポートの現場が確実に回らない。よって、ユーザー向けとヘルプデスク向けでほぼ対応マニュアル的なものが存在することになる。最近ではチャットボット等を作成して、自動回答するところもあるだろう。

●そんなものがほぼ存在しない中小企業
中小企業の情シスには、ほぼそんなものは存在しないことが多い。少なくとも自分の経験上はそうだった。100人の5%で5人しか問い合わせしないなら、その5人をなんとかするほうが早い。マニュアルを作ったところで、言うなれば最大5回しか使われないことになる。母数が少ない場合は、発生しないこともある。また、大企業ではマンパワー的にも可能だろうが、マニュアルを作るとメンテナンスが確実に発生する。そういったことも考えると、よほどのことが無い限り、作るよりは数人を直接救護したほうが早い、ということになる。

ただ、パスワード等の簡単な問い合わせは、記録に残さなくても最悪支障はないが、そうでないようなものは、対応記録、ログとして残しておくことを推奨する。それが重要だ。特に解決までに時間を要したものは。それは仮に2回目が発生した時に、よりスムーズに対応する為である。

なお、例えば、SaaSの入れ替え等で仕組みが一切変わるような場合は、当然、社内展開するようなマニュアルは作成しないと批判噴出となる為、ご注意されたし。

●スキルは深いものが要求されることもある
ヘルプデスクとはいうものの、情シスに関しては、マニュアルをみて対応したら終わり、ということはよほどの大企業の専門部署で無い限りはないだろう。例えば、インフラエンジニアなら、多くの人が経験したことがある、物理サーバーのファイルシステムの空き容量不足対応。使用量が95%を超えて空きがほとんどない、そういったことだ。ファイルシステムの拡張ができたら良いが、そういうことが出来ない場合もある。(クラウドや仮想OSでは簡単に出来ることが多い)

その場合は、どこに大きなデータや大量のファイルが蓄積しているのか、そして、それらを発見できたとして、削除や移動することが可能なのか、ということを調査しなければいけない。そういった状況は利用しているOSやアプリケーションによって、全く異なる。割と地道な調査になる。こう書くと、それなりの専門性や経験が必要になるイメージを持つことになるだろう。

ただ、これが不思議なことにユーザーが利用するパソコンになると、「なんだ、そんなことか」みたいな感じで、難易度が下がったように理解されがちである。しかし、やることはサーバーでの調査と同じになる。むしろ、サーバーは情シスが管理していることが当然多く、割と自由に入ることが出来るが、ユーザーのパソコンを調査することは場合によっては、ユーザーに時間を作ってもらい、短時間でやらないといけないこともあるので、逆に難易度は高い。

ネットワークの障害1つをとっても、サーバーがネットワークにつながらない、パソコンがネットワークにつながらない、その難易度はさほど変わらない場合が多い。コロナ禍の対応で「テレワークで自宅からつながらない」といった問い合わせ等は、社員の自宅のネットワークは当然分からないこともあり、四苦八苦した情シスも多かったのではないかと思う。

●情シスとしてアピール・向上
ここまで書いた情シスとしてのトラブルシューティング能力というのは割と普遍的なもので、企業の大小や環境の差異に関わらず、発揮出来る必要があり、それは多くの企業にとっては必要なはずである。しかしながら、最初に書いたように、ヘルプデスクと聞くとどうもそこまでのスキルがないように捉えられがちである。今回、このギャップを少しでも埋める為に執筆したが、各情シスの方々もまずは自らの能力を認めつつ、社内に少しずつ認知させていくことが、こうした誤解に近いような認識をなくしていける一歩だと思い、情シスをより良い職種として向上していくことにもつながると考えている。

PCNW運営委員より寄稿

大手ITベンダー等でITインフラ設計・構築・保守・運用等を幅広く経験後、「ぼっち情シス」や「セキュリティエンジニア」として、PCトラブルから情報セキュリティ監査対応まで幅広く担当。
現在は、「ぼっち情シス」として活動中。

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