情シス的にとらえるAIチャットサービス

2023年4月12日

●話題のAIチャットサービス
2023年が始まって早々、IT界隈、ビジネス、コンシューマー関わらず、AIチャットサービスの話題でもちきりだ。執筆にあたり、具体的な名前は避けて、AIによるチャットサービスやテキスト生成サービス等をこの記事では、「AIチャットサービス」と表現することにする。
学問的にいえば、言語モデルの話になってくるのであろうが、自分も含めて、そういったことを聞いて、「へぇ〜そうなんだ」と思う人は極々少数であろう。どちらかというと、何かテキストを投げかけて、それに対する回答をくれるもの、という理解でいる人が大半なはずだ。
まだ、出始めたばかりだが、当該サービスが与えるインパクトは大きい為、それを情シス的にどう捉えるか、書いて見ようと思う。

●AIチャットサービスの側面
前段でも書いたが、改めて、「AIチャットサービス」について、より汎用的な表現で紹介したい。当のサービスに聞いてみたら、このような回答があった。
※以下の回答は自分でさらに修正・加筆した

・バーチャルアシスタント
 バーチャルなアシスタント。音声やテキストを通じてユーザーとの対話を行い、タスクを実行する。

・チャットエージェント
 オンラインカスタマーサポート。人工知能を用いて、自動的に返答するチャットボット。

・テキストジェネレーション
 人工知能によってテキストを自動生成する技術。

・デジタルアシスタント
テキスト等を通じて、ユーザーの日常生活をサポートするツール。

・テキストマイニング
 大量のテキストデータから意味のある情報を抽出するツール。

大きく2つの側面があると思う。対話型で返してくれるので、アシスタントやサポート、という側面と、何か欲しいテキストを作り出すという側面。では、これをどう情シス的に利用していくか、利用出来る可能性があるか、ということを次で記載する。

●情シス側面での活用
アシスタントやサポート、という側面では、利用次第では、情シスのヘルプデスクは大幅に緩和される可能性がある。AIチャットサービスが参照する記録やログ、または仕様書や規定等があることが条件とはなるが、ユーザーからの問い合わせに対して、そういったソースを照合して、情シスが回答するような回答をしてくれることが期待出来る。
例えば、あるクラウドサービスを導入したいが、どういう手続きが必要か?みたいなことは、セキュリティ規定を見ても分からない、そもそも規定がどこにあるか分からないみたいなこともあるだろう、だから、情シスに聞く、ということになることも多い。
それをAIチャットサービスが規定を参照し、ユーザーからの質問に答えるというのは、情シスに限らずコーポレート機能の質問については大半がなくなる可能性がある。すでにそういうサービスを立ち上げている、開発している企業もあるようだ。

何か欲しいテキストを作り出す、という側面は情シスとしての技術的な側面から記載しよう。情シスはOS、サーバー、ネットワーク機器、セキュリティ、開発等、幅広い分野が対象となる。スーパーマンも世の中にはいるだろうが、通常は2、3の専門分野があれば良いほうだ。
ただ、システム変更やトラブルシューティングで苦手な分野の設定をしなければいけないこともある。メーカーのサポートに入っていれば良いだろうが、保守費用からか入っていない場合は自力解決が必要だ。そんな時、主要なメーカーの製品であれば、質問の仕方は工夫しなければいけないが、おおまかな設定を教えてくれることは期待出来る。これはある意味、保守ベンダーにとっても脅威なことではある。
※マイナーな製品でもそのマニュアルや仕様を参照可能にすれば、大きな力になるかもしれない。

●利用ルールの整備とリテラシー強化
前段で良いことをメインに紹介してきたが、現時点でAIチャットサービスの利用に後ろ向きな企業もあることは明確な事実である。利用を禁止している企業もあるのは周知の事実であろう。海外では国として利用禁止しているところもある。
企業にとっての一番の懸念は情報流出やセキュリティの懸念であろう。しかも、これだけ騒がれて利便性を問われたら、盲目的になりがちになる。よって、情シス的にすることは2つだと考えている。

・AIチャットサービスの利用ルールを作ること
・従業者のITリテラシーの向上に努めること

現状、利用ルールを作っている企業の割合は、ある調査において、2023年3月時点で、1割程度という結果もある。つまり、技術の利用にルールが追いついていない状態である。ITではよくあることだが、ここまで急激に来たことは個人的には記憶にない。
よって、ルールや規定を作ることは急務ではあるが、そういった想定しえないことが起きた場合でも悪いほうへ動かないように日々、常にITリテラシーを向上するよう、情シスとして努めることが改めて問われているのではと思っている。

PCNW運営委員より寄稿

大手ITベンダー等でITインフラ設計・構築・保守・運用等を幅広く経験後、「ぼっち情シス」や「セキュリティエンジニア」として、PCトラブルから情報セキュリティ監査対応まで幅広く担当。
現在は、「ぼっち情シス」として活動中。

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