DSS(デジタルスキル標準)についての所感

2023年2月13日

●概要紹介

昨年末2022/12/21、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)、経済産業省からデジタルスキル標準(以降、DSS)が公開されました。

公開時のページはこちら
https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/dss/index.html

以前から検討はあったらしいですが、個人的には割と唐突にきた、という感じがします。それは後述します。

その名の示す通りですが、DSSが出来た背景としては、大雑把に言うと、国としてDXを進めるにあたって、デジタル人材の育成や確保は急務、そこから、個人の学習や企業の人材確保・育成の指針としてDSSを策定した、ということになります。

詳細は上記にあげたURLから資料をダウンロードしてご覧ください。


●ITSSについて

DSSは、従来のITスキル基準(以降、ITSS)とはいくつかの点で異なります。 ITSS は主に情報技術の仕事に必要な技術的スキルに焦点を当てていました。それは分類される職種をみてもわかります。例えば、ITスペシャリストはハードウェア、ソフトウェア関連技術を活用するシステム基盤関連の設計構築、導入等が役割であり、専門分野の固有スキルもプラットフォーム、ネットワーク、データベース等、すぐ見てわかるようなものとなっています。

それらの分類された職種にスキルがあり、さらに1〜7にレベルわけされたものがITSSとなります。ITSSが出来たのは、およそ20年ほど前、2000年初頭です。だいたい、もうおわかりの方が多いかと思いますが、この頃は世の中的にITへシフトしていく頃です。システムエンジニア、SEなるものがどんどん出てきたわけです。今でもそうですが、この時代は特に技術をある尺度で計るみたいなものがなかったんですね。

面接とかで、下手すれば「技術あります」ぐらいで話が通じることもあったかもしれません。そういった背景もあり、スキルレベルを計る指標として、ITSSが策定された、ということになります。


●ITSSの浸透は・・・・

しかしながら、自分の周りだけなのか、もしくは聞いた人が少ないからなのか、ということもあるかもしれませんが、これだけ期間が経過しているのに関わらず、ITSSの認知度は、ITと無縁の一般の方は当然として、IT業界にいる人でもいきなり話が通じることはほとんど経験したことはありません。自分が最も得意なものは、ITSSでいう ”ITサービスマネージャ” なのですが、自分がそういっても、「あっ、私はITSSの●●のレベルXです」みたいな返事をもらったことは1回もありません。

なので、DSSが公開されたときに、???となったのです。そもそもITSSとDSSの出来た背景、自分が記載したのを再度見てください。だいたい似てるんですよ。ITの時もどんなレベルなら、スキルを持っていると言えるのか、DXを迎えた今は、DX人材ってどんなスキルを持っていればそういえるのか、そもそもITSSが消化不良でDSSが浸透するのか・・・というのは結構な疑問です。


●DSSの求めるスキルレベル

DSSがITSSと異なるところは、様々な状況に適用できる幅広いデジタルスキルをカバーしていて、 さらにDSSは、コミュニケーションや問題解決など、ITの技術以外に、ビジネス上で必要なソフトスキルにも重点を置いています。つまり、技術だけではない、というところを明確にしています。

とはいえ、具体的に、特に技術的にはどういうレベルを想定しているのか?というところは気になるところだと思います。DSSの ”DX推進スキル標準の策定方針” に5つポイントがあるのですが、そこの5つ目にこうあります。

独力で業務が遂行でき、後進育成も可能なレベルを想定
DX推進スキル標準全体として、詳細なレベル評価指標は設定せず、育成の目標となりうる、ITSS+「レベル4」相当(独力で業務を遂行することが可能であり、後進人材の育成も可能なレベル)を想定

ですので、少なくとも、技術的にはITSSのレベル4をクリアしてようやくDSSが対象とするレベルだと言えそうです。スタートラインレベルかも知れません。

よって、未経験はもとより、ITの経験が少ない人はまずDX人材になるというよりは、着実にITSSのレベルを1個ずつあげていく、ということになります。DSSはITSSでいう職種にあたるロールについて、1人が複数持つことも想定しているとあるので、DSSが本来期待する人材というのは、 ”さらに上” ということになります。

まだ公開されて時間がそれほど経過していないですが、今度はDSSが世の中に普及して、日本のIT、デジタルスキルが全体として向上していくことを期待したいですね。


<お断り>
本稿の内容は著者の個人的見解であり、所属企業及びその業務と関係するものではありません。

PCNW運営委員より寄稿

大手ITベンダー等でITインフラ設計・構築・保守・運用等を幅広く経験後、「ぼっち情シス」や「セキュリティエンジニア」として、PCトラブルから情報セキュリティ監査対応まで幅広く担当。
現在は、「ぼっち情シス」として活動中。

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