2020年1月20日
2020年1月20日
新年あけましておめでとうございます。本年がITに携わる人たちにとって素晴らしい年になることを祈念致します。
さて昨年の10/17の東京での第一回ITトレンド勉強会ではソニックガーデンの倉貫社長をお招きし、話をしていただいたが、非常に興味深い話だった。
ソニックガーデンは、社長の倉貫氏が大手SIerにて経験を積んだのち、社内ベンチャーを立ち上げ、MBO(会社の株を自分たちで買い取り独立すること)を行い設立した会社である。
ソニックガーデンは、月額定額&成果契約で顧問サービスを提供する「納品のない受託開発」を展開している。オフィスはなく、全社員がリモートワークで仕事をしているという。なんと、全世界を旅行しながら仕事をしている社員も居るのだ。
このリモートワークに関して、彼らは様々な実験と試行錯誤を繰り返しながら、どうやれば全員が実際のオフィスで仕事をしているようにリモートワークができるかを探求してきた。
業務報告や連絡・会議などは市販されているコミュニケーションのツールを使えればリモートでも問題はない。ただ、挨拶や雑談、そして誰かの呼びかけに応じて集まるちょっとしたミーティングのような、実際のオフィスで行われる日常のコミュニケーションをどうリモートで実現するかということが課題だったという。
彼らがたどり着いた解決策は、ネット上に現実のオフィス同じようなバーチャルオフィスを作り、社員全員がそのオフィスにバーチャルに出勤するという形だ。実際にそのバーチャルオフィスを見せてもらったが、確かに現実のオフィスのように社員がそこで仕事をしているように感じることができ、リモートでの飲み会もこのシステム上でやるのだという。
ちなみにソニックガーデンではそのシステムを外販している。(https://www.remotty.net/)
勉強会では主にリモートワークの話が主だったが、彼らはフラットな組織で、管理をしないユニークなマネージメントを行っている。まさに今話題のティール型組織の実践例である。
ティール組織は、簡単に言うとするならば「目的に向かって、組織の全メンバーがそれぞれ自己決定を行う自律的組織」のことだ。セルフマネージメントということで、上司が部下の管理を行わない、というかそもそも上司がいないという、従来の組織形態では考えられなかった特徴を持つ。個々の社員が組織の理念を共有しながら、自律的に働く組織なのだ。
ソニックガーデンもフラットな組織で、上司はいなく決裁もなし。経費は承認なく使えて休暇は取り放題。売上目標やノルマはなくて、もちろん働く時間も場所も縛りなしで副業もOKという驚きの職場である。
報酬や昇格に関しては、職種ごとに基本的な給与はほぼ一律にして、賞与は山分けにするのだそうだから驚きである。全員が同じ給与だが、早く仕事を終えれば、あとは好きなことをして良いという。
1週間でやるべきことを生産性を上げて2日間で終えれば、あと3日間は休んで遊びに行ってもいいのだ。つまり、彼らにとって生産性を高めたり成長するモチベーションは、自由にできる時間が得られるということなのだ。
ソニックガーデンでは顧客との契約においては、時間ベースでなく成果ベースの契約になっているからこんなことが可能となる。
なぜこんな組織運営ができるのか、その秘密の一つは採用にあった。彼らは新入社員を採用する際に、長い時間をかけて採用するという。採用面接の1回や2回でその人の本質はわからない。なので社員に採用する前から一緒にある程度仕事をしてもらい、1年くらいかけて一緒に働ける社員かどうかを観察するという。
時間をかけて企業の理念に沿う人材を採用することはすごく理にかなっている。こうして採用した信頼できる社員は、性善説のもと管理することが少なくて済むのだ。メルカリ等のネット企業もそういう考え方で管理コストを抑えているという。管理を最小にすることで生産性を上げているのだ。
小さなソフトハウスだからこそ、そんなマネージメントができるのだと思うかもしれない。ただ、彼らは最初から起業したわけではなく、大きな会社の中での社内ベンチャーからスタートしたのだ。だから普通の日本の大きな企業の風土を知っているし、そこから少しずつ試行錯誤して今のやり方にたどり着いた。徹底的に生産性を上げ、社員が自律的に働けて、管理しなくてもいいような環境づくりに挑戦してきたのだ。
だから小さなソフトハウスだからやれることで、普通の会社は環境が違うから無理だと思ってはいけない。彼らのやり方を参考にして工夫すれば、組織として成果を出すこと個人が楽しく働くことを両立でき、自由に働いて成果を出し続ける職場に一歩近づくことができるのだ。ぜひ参考にして欲しい。
<お断り>
本稿の内容は著者の個人的見解であり、所属企業及びその業務と関係するものではありません。
寺嶋 一郎 | PCNW幹事長 TERRANET 代表 |
1979年3月に東京大学工学部計数工学科卒業。その後積水化学工業に入社し制御や生産管理システム構築に従事。MIT留学を経て、(株)アイザックの設立に参画、人工知能を応用した積水化学の工業化住宅のシステム化に貢献する。
2000年6月に積水化学に戻り情報 システム部長として積水化学グループのシステム基盤の標準化やITガバナンスの改革に取り組む。2016年3月に退職し、現在、TERRANET代表。
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