YOUはどうして情シスに?
 ~「ひとり」からの挑戦~

2019年4月02日

どこかで聞いたことのあるフレーズをタイトルに持ってきてしまいましたが、今回初めてコラムを書くにあたり、自己紹介も兼ねて自分の歩んできた道を振り返ってみたいと思いました。

製造業を営む現在の職場に入社したのが約15年前。当時の社員は25名程度で、いわゆる「情シス」にあたる部門も担当者もなく、というのはIT化された業務がほとんどなく受注管理ソフトや会計ソフトが動けば大丈夫、くらいの感じでした。
おそらく当時は1社のITベンダーがすべてを把握していたのではなかろうか・・・

中途入社の私が配属されたのは生産管理部門で、現場や外注への生産指示を行う中で、工程を組み立て指示書や発注書を発行するためにPCを使う程度でした。

前職(サービス業の人事)でAccessを使ったすごく簡単なデータベースの管理をしていたことが上司の耳に入り、『抜型の管理がいい加減になっているから、なんか管理しやすいヤツ、作って』とざっくりした命令を受け、軽い気持ちで引き受けました。
(ちなみに前職の上司がなぜかSE出身だったのでちょっとだけ手ほどきは受けていました)

思えばこれが「情シス」への道のはじまりだった気がします。

さらに『新規で基幹システム入れるからベンダーと打合せやっといて』というボスの命令で、当時の主業務のかたわらで基幹システムの導入担当者を引き受けました。

とはいえ、私にはITの知識も技術もほとんどありません。ちょっとExcelが得意だとかAccess触ったことあるとかその程度の人間に、なぜそんなことを任せるのか。

他に誰もいないからです(笑)

このぐらい小規模な製造業ともなると、大半の従業員は生産現場の人だったりしますし、残りは営業さんや1人か2人のバックオフィス。当時の弊社にはITシステム担当者をわざわざ雇うという発想もなければ、雇われている従業員もパソコン触ったことなんてほとんどないという人が大半でした。
そんな中ちょっとパソコン詳しそうなヤツが入ってきたからやらせてみよう、というノリで白羽の矢が立っただけです。

「情シス」と呼ばれる方にはそんな人もいるかな?と思うのですがいかがでしょうか。

そしてこの10年余りで業績は右肩上がりに伸び、売上は入社当時の3倍近くになりました。そうなると当然ITのチカラで<情報共有>を進めることが必須となります。
ついに、「システム管理課」が発足しました。所属は、私ひとりです。そして変わらず片手間です。従来業務のサポートのかたわら、なんやかんやと日々ヘルプデスク業務などを続けております。

アラフォーにして「なりゆきで情シス」となったものの、情シスを名乗るにはあまりにもスキルが低い私なので、とにかく学ぶことには貪欲にならざるを得ません。
『PCNW』への参加も「学ばなければこの職種で生きていけない」という焦りからでした。社内には誰も教えてくれる人はいないのだから。セミナーや展示会にもなるべく参加しとにかく知識や情報を浴び続ける・・・

これを続けていると、いかに自社の環境や考え方が旧時代的なものにとらわれているかを否が応でも思い知らされます。こりゃヤバイぞと。
しかし自社の組織にどっぷり浸かっている人には、なかなかその危機感は伝わらない。そして社内においては情シス=非生産部門という異端に身を置く私の発言力は極めて弱いのです。

「ひとり情シス」がまさに「独り情シス」であることを痛感した私は、どうすればこの「ひとり」が会社を変えることができるかを考えるようになりました。
そんな中、2018年PCNW大会での基調講演で語られた言葉のひとつが自分を動かしました。

”自分の有用性を証明せよ。”

営業・生産で利益を生む部門からも、経営者からも「役に立つ情シス」と見られて初めて話を聞いてもらえる。とにかく”緒戦で圧勝する”ことが大事。

そう意識すると、社内の様々なことに首を突っ込まずにいられません。
ISO活動の中心になる。5S活動に関する情報を発信し続ける。金融機関との融資打合せに参加する。社内諸規定の整備。新会社の設立。
方法として正しいかどうかはまだわかりませんが、情シスの範疇にこだわらず社内外とのコミュニケーションの幅を広げることにしました。

結果、弊社には「ひとり情シス」から「0.2人情シス」くらいになりました。元々そうでしたが、情シスっぽい仕事をしている時間は本当に半分から4分の1以下になりてんやわんやです。

それでも見方を変えれば、社内では替えの利かない唯一無二の存在感を強めることで、発言力も多少強くなった気がするのできっと間違ってはいないかなと思います。

先日、現役引退を表明したイチロー選手が、かつて自動車メーカーのCMで発していたフレーズ「変わらなきゃ」。
『会社を変えるならまず自分が変わらなきゃ』と、あのCMから20年以上経った今、ほぼ同世代のサラリーマンにまた響いているとはイチロー選手も思ってもいないでしょうが。

<お断り>
本稿の内容は著者の個人的見解であり、所属企業及びその業務と関係するものではありません。

行 純志 清水産業株式会社
総務部システム管理課

30代で中途入社し、アラフォーにして生産管理部門から成り行きで情報システム部門を兼務する。現在は情シス専任とはいえ、そのほか「社内の誰もやらない仕事をやる」係。
趣味はアカペラと詩吟とワイン。

© PC・ネットワークの管理・活用を考える会