2017年2月2日
2017年2月2日
今から40年ほど前、私が企業に入社したころは、紙に手描きで報告書を書いていた。字が下手で、達筆で報告書を書く先輩が羨ましかった。そのうちワードプロセッサーなるものが出てきた。それも1部署に1台あるかないかの高価なものだった。重要な文書は、専任の女性社員に頼んで、美しい文書を作ってもらった。ちなみに、アラン・ケイは、ちょうど同じ40年前に1人1台のコンピュータの登場を予測した。その予言は実現し、ついにパソコン(PC)が登場する。それを使うと、一人で報告書が作れて、文字が下手な劣等感から解放されたものだ。
そのうち、オフィスの机にはPCが並ぶこととなる。それは会社に張り巡らせたネットワークと繋がり、PCの前に座っていると仕事をしているように見えるようになった。なので、PCが思い通りに作動しなかったり、ネットワークが少しでも止まったりすれば、まるで仕事もストップするように思ってしまい、大変なことになる。 PCやネットワークは、ちゃんと動いて当たり前。水や空気のようなもの。それらがトラブルと、怒られるこそはあれ、褒められることはない。
筆者はこうしたPCやネットワークのシステム管理者たちの集まりであるPCNWというコミュニティの幹事長をやらせていただいている。そこで一番驚いたのが、「一人情シス」と呼ばれる方の存在だ。彼ら/彼女らは一人で、さらには、なんと経理や総務と兼任しながらシステム管理を一手に引き受けているという。もっとITが使いやすいものであればいいのだが、そう簡単に思い通りには動かないし、下手をすればウィルスに感染し情報漏洩がおきれば、会社を潰しかねない。このやっかいなネットワークやPCが、ビジネスの役に立つように、たった一人で日夜頑張っているのだ。
考えてみて欲しい。企業規模の大小にかかわらず、PCやネットワークの管理において最低限やらなければいけないことは同じである。電話から、ネットワーク、PC、サーバーに対して、安定稼働を要求されるのだ。誰にもたよることができず、一人でなにもかもやらなければならない。広範な知識が必要だし、優先順位をつけてテキパキと効率的に仕事をこなさなければならない。PCやネットワークの不具合は「なんとかしろ」と、すべて彼ら/彼女らのもとに苦情が行く。トラブルが重なったりした時は大変で、有給休暇も簡単には取れないという。
「デジタル」時代とも言われる昨今、ますますITは企業のビジネスにとってなくてはならないものになりつつある。にも関わらず、企業のトップや社員のITに対する認識は高くない。「ITはよくわからん」ということでPCやネットワークのことはITの担当者にすべてを委ねている。彼らは単なる便利屋ではない。この記事を読まれた、経営者やマネージメントに関わる方に、ぜひ彼ら/彼女らの仕事を正当に評価し、言い分をきちんと聞いて欲しい。それとともに、一人情シスの皆さん、知恵を使い工夫しながら、くじけることなく頑張って欲しい!
寺嶋 一郎 |
PCNW幹事長 TERRANET 代表 |
1979年3月に東京大学工学部計数工学科卒業。その後積水化学工業に入社し制御や生産管理システム構築に従事。MIT留学を経て、(株)アイザックの設立に参画、人工知能を応用した積水化学の工業化住宅のシステム化に貢献する。2000年6月に積水化学に戻り情報 システム部長として積水化学グループのシステム基盤の標準化やITガバナンスの改革に取り組む。2016年3月に退職し、現在、TERRANET代表。
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