デジタル時代の新たなリーダーシップとは

2024年1月5日

新年明けましておめでとうございます。

年の初めに、デジタル化が叫ばれる中、ますます企業にとって大事になってくる情報システム部門に置いて、今後必要となる新たなリーダーシップに関してお話ししたいと思います。

何が起きるかわからない今の時代、リーダーに求められる役割も大きく変化しています。そんな中、昨今注目を浴びているものが、「サーバントリーダーシップ」と呼ばれるものです。

サーバントというのは「使用人」「召使い」という意味です。サーバントリーダーシップとは、部下に対して「奉仕」の気持ちを持って接し、どうすれば組織のメンバーの持つ力を最大限に発揮できるのかを考え、その環境づくりに邁進するリーダーシップのことを言います。

サーバントリーダーシップは、「まず相手に奉仕し、その後相手を導く」という考え方に基づいています。

通常リーダーシップといえば、強い意思のもと、リーダー自身の考え方や価値観を貫き、部下を強い統率力で引っ張って行くようなリーダーシップ像を思い浮かべますよね。

こうした部下の先頭に立ち、「俺について来い」とぐんぐん引っ張っていくリーダーシップは「支配型リーダーシップ」と呼ばれます。これは、これまで主流となっていたリーダーシップのスタイルで、部下を管理・命令する事で、組織を動かすわけで、「強制型リーダーシップ」とも呼ばれます。

ところがサーバントリーダーシップは、そうしたリーダシップと正反対なのですね。そして「支援型リーダーシップ」とも呼ばれます。

これまでの「支配型リーダー」と「サーバントリーダー」の違いはどこにあるのでしょうか。

支配型リーダーは、部下に対して、自分の地位とその権力を使って、一方的な説明や命令を出す事でコミュニケーションをとるのですね。そして失敗した部下には厳しく責任を問い罰したりします。いわゆるアメとムチを使い部下をコントロールしようとします。

それに対し、サーバントリーダーは地位にかかわらず、チームで協力して目標達成し、皆がWin・Winになることを望みます。部下と人間としての信頼関係を重視して、部下の自主性を尊重し、部下の話に耳を傾けながら、協力して目標を達成していこうとします。そして部下を中心に考えた組織運営を行なうのです。部下の個人個人のモチベーションを意識し、例え失敗してもそれを学びに変えていく環境づくりに取り組んでいきます。

サーバントリーダーはチームとして進むべきビジョンと行うべきミッションを明確に描き、それを部下がきちんと腑に落とすまで、チーム全体に共有させます。そうすることで、部下はリーダーから「命令」されて行動するのではなく、自分の「課題」や「問題」として主体的で自律的な取り組みを開始できるのですね。部下のモチベーションも高くなり、個々が自律的に前向きに動けるようになります。そしてチーム全体の組織力も向上し、目標を達成できるようになるのです。

ただサーバントリーダーは部下の言うことを何でも聞くわけではなく、部下がビジョンとミッションから外れた言動を取った場合は、きちんと指導して改善を促すことも行います。

支配型リーダーの組織と比べると、サーバントリーダーがいるチームでは、部下が自由に発言しやすくなり、コミュニケーションが円滑になります。最近よく言われる「心理的安全性」を担保した環境、すなわち何でも言える場を作るのがサーバントリーダーです。

特筆すべきは、サーバントリーダーは内省を通じて、自分を見つめ、自分が何者かということを知っているのです。だからこそ、自らの良心に従い、より良い世界へ導くことを自身の責務と信じ、周囲の人々にとって、組織にとって、優先されるべきことが為されているか、常に心をくだくことを自身の責務とし部下を導いていくのですね。

サーバントリーダーシップにおいては、一見両立しないとも思われる「奉仕」と「導き」が見事に両立するのです。奉仕として部下に尽くしながら、同時に部下を導いていくことができるのです。「奉仕」と「導き」がお互いに高め合うように機能しているとも言えますね。

「支配型リーダー」が大量生産時代のリーダーシップだとすれば、サーバントリーダーシップはまさにデジタル時代のリーダーシップではないでしょうか。

企業の情報システム部門の皆さんは、社員のPCやネットワークを管理・サポートして「奉仕」するとともに、そうした情報機器でより良い価値を創り出すための「導き」を行なっているはずです。

これからDXを推進させるためには、こうしたサーバントリーダーシップを発揮して、この一年を素晴らしい年にしていただきたいと思います。

寺嶋 一郎 PCNW幹事長
TERRANET 代表

1979年3月に東京大学工学部計数工学科卒業。その後積水化学工業に入社し制御や生産管理システム構築に従事。MIT留学を経て、(株)アイザックの設立に参画、人工知能を応用した積水化学の工業化住宅のシステム化に貢献する。
2000年6月に積水化学に戻り情報 システム部長として積水化学グループのシステム基盤の標準化やITガバナンスの改革に取り組む。2016年3月に退職し、現在、TERRANET代表。

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