情シス立ち上げ!?〜元SIerのTrap & Trues〜

2019年12月27日

SIer。SE。どちらも造語です。なんともふわっとした略称です。特に後者はガラパゴス的な日本独自の職業的立ち位置を指します。
定義が広範であるがゆえに、ふとこれらの職業が何をやっているのか問われた時、即答出来る方は少ないのではないでしょうか。そして私もそんなSIerで長年SEをやっていた人間の1人でした。

何やらサブタイトルが不穏ですが、今回は元SIerから見た、情シスのあり方を私なりの解釈でお伝えできればと思います。

私がいわゆる「情シス」としてのキャリアをスタートさせたのは2019年6月のこと。執筆時点では情シス歴0年7ヶ月になります。
そう、私はぴかぴかの情シス1年生なのです。まだまだSIer脳から抜けきれていません。


10年以上稼働している基幹システムのリプレイスを行うため、この際情シス部門を立ち上げて欲しいとのありがたい御縁があり、十数年身を置いていた「ベンダー」の世界から、今までクライアントとして関わってきた「情シス」の世界に飛び込むことになったのでした。

さて、転身して最初に飛び込んできたのは企業のITガバナンス整備・・・とかではなく「社内ネットワークの大トラブル」
社内ネットワークが遅い。インターネットにつながらないことがある。メール送受信に障害が発生している。

私が入社するまでは社内インフラ、システムの全てを数社のITベンダーに委託させて頂いていました。いわゆる社内全ての情報システムをアウトソーシングしているという状態。これによって明確な責任分界点を引くことが難しく、特にインフラにおいてはサーバーなのかネットワークなのか、はたまた複合的要因なのか混迷の様相を呈しておりました。
逆説的に申しますと、それだけ多くのITベンダーに支えられて数十年、当社のシステムは回っていたということです。

突然降って湧いた「聞いてないよ!」な話ではありましたが、よくよく考えてみれば、これぞ情シス部門が真価を発揮すべきところ。やってやろうじゃあないか、ということで、転身間もない私は「SIerでやってきた自信感」をもってこれに挑むことになったのでした。

SIerという環境で育ってきた人間は、少なからずプロジェクトという名の戦場を転戦しており、プロジェクトの成功体験、または自身が成功に導いたということがそのまま自信に繋がります。特に後者は経験に裏打ちされた自信、ということで良い意味での自分流のやり方を構築していく方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。反面、「俺のやり方についてこい」(俺に任せればうまくいく)という過信を生んでしまうこともあります。

案の定、この過信が命取りになってしまいアタマを強打することになりました。
今まで上手く行っていたやり方が通用しない!

問題の切り分けを行い、課題を炙り出し、優先順位付けをし、スケジュールを引いてプロジェクト体制を構築する。当たり前のことをきちんとやって進めているはずなのに一向に成果が出る兆しはありません。協力関係にある当社のITベンダーとの関係も(私が勝手に)険悪になってしまう始末。
駄目だ、これじゃ。プロジェクトマネージャー失格じゃないか!

よくよく考えてみたら当たり前でした。
私、SIerのプロジェクトマネージャーじゃないもん。立場間違えてるやん。
情シス的観点で問題を見ず、ITベンダーに任せるべきところを引き受け、「ユーザー不在のソリューション」を行おうとしていたのです。

ソリューション(解決)はユーザーニーズ(要望)に答えるもの。今回の例でいえば「業務に支障のない範囲まで回復出来れば」、まずは良いはず。専門的なところはITベンダーにお任せして、私は業務が上手く回る手立てを第一に考え、動くことが正解だったのです。なんでこんな基本的なことを忘れていたのか。
一重に私の「過信」が仇となり、視野狭窄となって自分の目指すゴールがユーザーニーズであると勘違いしていたのです。

結果、ITベンダーの方々の多大なるお力添えもあり、時間はかかりましたがこのトラブルは業務的にも技術的にも解決するに至りました

何ともお恥ずかしい限りの話ではありますが、これはどんな経歴を持った方々も陥る可能性のある罠なのではないかと感じます。
何かを実践する為には今までの経験に慢心せず、冷静に自分の立ち位置と周りの状況を見て、基本に立ち返ること。特に新しいことを始めるにあたって、経験によって働く認知バイアスは罠以外の何者でもありません。

SIerと情シス、それ以外のどのような立場もユーザーニーズに答えるソリューションを提供していくことがプロフェッショナルとしての存在意義ではありますが、こと情シスにあたってのユーザーは「社内全体」であり、その中に様々なステークホルダーが存在します。

それらの要望を汲み取り、全てに対応していくことは並大抵の労力ではありませんが、全体が抱える要望を要約、分類し、解決するための「設計図」を作っていくことが情シスに求められる一つの役割ではないでしょうか。そしてその設計図に基づいて全体の指揮を取っていく。さながらオーケストラの指揮者のようではありませんか。
そう考えるとポジティブに捉えて、1人情シスを経験するのも悪くはないのかもしれませんね(!?)

さて関連して、手前味噌な宣伝ではありますが、私が運営委員を務めますPCNWの次回勉強会(2020年2月開催)では、私が20代にお世話になったSIer企業の大恩師に登壇して頂く予定です。

お題は「開発パートナーと上手く付き合うには?」
代表取締役として辣腕を振るわれながら、今でも現場で新しいことを実践・探訪し続ける方でSIerとお付き合いのある方々には響くこと間違いなしです。是非お越しあれ!

<お断り>
本稿の内容は著者の個人的見解であり、所属企業及びその業務と関係するものではありません。

杉山 賀一 大紀商事株式会社
総務部 戦略情報システム責任者

2000年在学当時よりエンジニアとしてエンタープライズ・ソリューションの設計・開発に関わりその後外資系コンサルティングファーム、SIerにてアーキテクト、プロジェクトリーダーに従事する。
オフショアプロジェクトに関わった経験から中国オフショアに深く興味を抱き、1年半ほど遼寧省大連市に赴任。
その後事業会社やベンチャー企業にてプロジェクトマネージャーを歴任したのち、現職で情報システム部門を立ち上げる為「情シス」へ転身する。
座右の銘は「兵は拙速を聞くも、いまだ巧の久しきを睹ず」

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