ひとり情シス、誰に引き継ぐ?

2018年10月5日

IT総務、もとい、情シス業務に携わる方々、本日もお仕事お疲れさまです。
私のひとり情シス歴も、振り返れば十余年になりました。
実は今も情シス的な部が無いのですが、対外的には割り切って「情シス」とお答えしています。

数年前のこと、ハウジングのラックに入って1時間、2時間、じっと黙って配線を組んでいたときは、ひとり情シスのキーワードを「孤独」だと考えていました。
それは、組織の変更や拡大縮小、場所移転、セキュリティ事故対応、勤務場所の多様化といったイベントに常時寄り添い、身の丈に合ったITを(ひとりで)配備する人。
ネットワークの導入から設計稼働、ときには障害や回復を経て、撤廃廃棄までのライフサイクルを(ひとりで)看取る人。
組織が果たすべきセキュリティと、実現場とのギャップに困り、それを埋めようとしてやっぱり毎日(ひとりで)困る人。
そんな得難い現場にいるのに、ひとりだなんてなんと勿体ない…と。

その後、PCNWの会に知己を得て、もうすこし違う情シスも存在することを知りました。

山登りにたとえていうなら、たとえば最初は枯れた山に岩が切り立っていたとする。
社員がそこを歩くと、情報共有の不備やセキュリティ事故に悩まされて仕事が滞るので、土壌を入れて草の根を張らせるあたりがIT配備のフェーズでしょうか。
当然、個々のITには寿命があり、放置すればいつか崩れることを情シスは知っています。
そこで立ち止まり、枯れては生まれる草の根の側から声を出して、根気よく統制し続ける仕事も情シス。
かたや、麓の芝生に人を置き、峠の道にも人を置き、手下の勢へ薫陶を与えて増やしながら先へ進んで、最終的には山を動かしてしまうような仕事も情シス。
後者はとくに、高度な知見と経営感覚を得て世の中を牽引するような "一流の情シス" として堂々と取り上げられたりしますね。 個人的には、どちらもそれぞれ面白く、優劣つけがたい生き方のように感じます。 (負け惜しみではないですよ)
"一流の情シス" が山を征服するには、草の根係を途中に据え置いて、働き続けてもらう必要がありますので。

そういうたとえをまだ続けるならば、「ひとり情シス」というのは片手片足以上が必ず草の根係になっているようなものです。 自分が離れると山の足元が枯れると思うから、そこを離れずにいる。
「稼げる社員を、(間接部門の)情シスには充てられない」のが組織の要請だから、今いるひとりでなんとかしようとする。
この組織の、次の情シスには誰がなるでしょうか?

それは、根深い問題のブーメランとして落ちてきます。 現在の情シスがひとりなのは、ITの規模が小さいとか従業員が少ないとかの都合ではなく、費用感や重要度、関心といった経営の意思が共有ないし忖度された結果でした。
誰が忖度したかというと、当然のことながら情シスも、自分も、とブーメランが帰ってくるわけです。 ITの予算や企画を上申する担当者でありながら、担当者そのもの価値に関して上申せずに、諦めている。
これはいけない。 そんなところに後任はいないし、今より悪い未来が来そうです。

さて、冒頭でひとり情シスの特徴を挙げる際、あえて「(ひとりで)」と入れさせていただきました。
もし、自組織のITが今後も安寧であってくれ、攻めも守りも出来てくれと願うなら、いま現在着任中の情シスこそが、この「(ひとりで)」を除かなくてはなりません

ITをひとりで配備してはいけない。 ユーザーにも一定の内容を移管し、展開の一端を任されていただきましょう。
障害をひとりで引き受けてはいけない。 外部の力を頼るのは勿論、直接の関係者にも何でもいいから支援を求め、「巻き込まれ感」を共有しましょう。
ポリシーを受け身で作っていてはいけない。 自分もしっかり勉強し、然るべき相手とたくさんの話をして、守らせるための施策と運用も回して助けていただきましょう。
情シスの活動が組織を支えるという点に関心が向かなければ、重要度が上がらなければ、「ここに良い人を置こう」という意思は生まれないですから。

おっと、なんということでしょう。 引き継ぐ話が、今より頑張る話になってしまいました(笑)
その点、経験不足で口数も武装も足らず、うまくゆかないことだらけで途方に暮れてはいますが、今はひとり情シスでも「孤独」だとは考えていません。
孤独を排する方向へ頑張ることで、より情シスらしくなると嬉しいですね。

まずは、仲間づくりから始めましょうか。
PCNWの勉強会で、語り合ってみませんか。

<お断り>
本稿の内容は著者の個人的見解であり、所属企業及びその業務と関係するものではありません。

松下 麻紀 アルバス株式会社
プロジェクト推進ブロック

1967年生まれ。伝統的な汎用機プログラマとして新卒入社後、おおむね社外常駐でWindowsのクラサバ系SE、パッケージアプリのテスター等を経て、1996年頃よりグループウェア「ノーツ」のサーバー導入とネットワーク接続に特化。
2005年頃より現職のひとり&ひとりめ情シス。

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