データの向こう側にある何か

2018年3月27日

テキスト・音声・動画といった種々のデータが、SNS等のシステムを通じて洪水のごとく我々の手元に届きます。最近のインターネットでは、音声や動画といったデータが主力かも知れませんが、企業内情報システムの場合は依然としてテキストデータが主力ではないでしょうか。日々、メールやインスタントメッセージといったテキストデータに埋もれて業務を行っていると、周囲に溢れているテキストデータの「向こう側」が改めて気になってきました。

きっかけは、第二次大戦期、ドイツ空軍の出した要求仕様(RFP)に対して、ドイツ国内のメーカーが出した提案(=空軍という大口顧客からの注文を獲得するためにメーカーがありったけの知恵を絞った結果)を目にしたことです。当時、ドイツ空軍は偵察機に関する要求仕様(RFP)を作成し、複数のメーカーに提示しました。これに対して、私が調べた限りでは 3メーカーが対応していました。 2メーカーの提案(=試作機)は、天と地程の差がある野心的な設計(ぶっとんだ設計?)でしたが、要求仕様の内容を「忠実」に満たしていました。残り1メーカーの試作機は、平凡な設計(堅実な設計?)でした。
最終的に、ドイツ空軍は、天と地程の差がある野心的な設計の試作機は却下し、平凡な設計の試作機を採用したのですが、この試作機は、肝心の部分で要求仕様(RFP)の内容を逸脱していました。勝ち残ったメーカーは、要求仕様の裏側(向こう側)を把握していたのです。要求仕様(RFP)というテキストデータの「向こう側」にある、ユーザの「思い」を読み解く難しさを、改めて思い知りました。(そもそも無茶な要求だったという声もありますが...)

場面変わって私自身の日常業務、最重要項目は、社内システムのヘルプデスク「主担当」です。担当システムのユーザ(=社内SE)から入る問合せは大半がメールですが、問合せの対象となっているシステムが業務用システムなので、原則、問合せメールに対しては、必ず私から問合せ内容確認のための電話連絡を行っています。メールでは、問合せ元(=ユーザである社内SE)の「切実感」が、実感として分かり難いからです。
「今日の何時までに、この作業報告書データの登録を完了しなければいけないのに、訳の分からないエラーメッセージが表示され、処理を行えない!!今日は、顧客との打合せ予定も入っている!!!どうすりゃいいんだ!!!!」 といった切実感は、問合せメールでは欠落しがちです。(稀に、切実感を訴えるばかりで、肝心のエラーという事実に関する記述が、殆ど欠落している問合せメールも存在しますが...)
状況をメールというテキストデータに変換する際、「実態」が持つ多量の情報の内、大部分の情報がそぎ落とされてしまいます。この結果、「切実感」といった情報はほぼ完全に削除されてしまいます。しかし、ユーザの「切実感」という情報抜きで、社内ヘルプデスクとしての対応を行う訳にはいきません。
データ変換により肝心の情報が欠落するという類例は、TV会議システムの揺籃期、導入直後の企業で良くあった指摘、「議場の雰囲気が分かり難い!」でしょうか。「雰囲気って何?」と突っ込みたいところですが、配信される動画と音声の品質が上がった結果、この指摘はかなり少なくなったそうです。それでも、「報告会」という会議ならまだしも、「検討会」や「ふりかえり会」といったたぐいの会議における「何とも微妙な議場の雰囲気」は、重要な情報だと私は考えています。「この会議で決まる方針如何によっては、自分の立場が危うくなる!」といった場合、私なら何としても議場に行き、実体として会議に出席する道を選びますが。

もっとも、ネットワーク上で送受信可能な「情報」だけで、ビジネスを進める事が可能となっている事も事実です。実体としての本人は世界中を飛び回りながら、ネットワークを介したコミュニケーションだけで、ビジネスを成立させている企業家は、少なからず存在しています。ただ、企業内情報システムにおける「運用管理」業務には、必ず、「実体をもった人間」が絡んできます。企業内情報システムは、「業務」を遂行するために稼働しています。で、この「業務」を行っているのは、「実体をもった人間」です。(今のところ)
システムがうまく動いてくれないと「業務」に支障が発生し、「実体をもった人間」が困ります。この結果、クレームの連絡(電話・メール・怒鳴り声等々)が「運用管理」部門に入ってきます。さらに、最終的にクレーム対応を行うのも、「運用管理者」=「実体を持った人間」です。(今のところ)

企業内情報システムにおける「運用管理」業務を考える際、データは不可欠です。しかし、実体を持った人間という存在が絡む以上、データの向こう側にある何か...(熱意、葛藤 等々)も見通さなければいけないな~と、思いを新たにしました。休日、コーヒー片手に趣味の本を読みつつ、関連情報をネットで漁りながら。

<お断り>
本稿の内容は著者の個人的見解であり、所属企業及びその業務と関係するものではありません。

小玉 稔 PFUクリエイティブサービス株式会社
運用管理部

1954年 9月生まれ。大学卒業後 7年程、某エレベータメーカで生産技術部員として勤務した後、現所属親会社の前身である PANAFACOMに入社。フィールドSEとして、ユーザサポートやアプリケーション開発業務に従事。
その後、社内システム(社内SE向けシステム)の運用担当に転じ、現在に至る。一番の思い出は、開発を担当したシステム用サーバの設置されていた事務室が、「放火」に遭い、復旧作業を行った事。

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