2017年6月28日
2017年6月28日
2016年6月に発足した第3次安部内閣(第2次改造)は、「一億総活躍社会」の実現を目標に「働き方改革」を内閣の重要政策としている。そしてこの「働き方改革」とは、(1)「処遇の改善(賃金など)」(2)「制約の改善(時間・場所など)」、(3)「キャリアの構築」からなる3つ観点から、さらに9つの検討テーマを内閣が取り組むべき重要政策として設定している。その検討テーマとは、①「非正規雇用の処遇改善」、②「賃金引き上げと労働生産性の向上」、③「長時間労働の是正」、④「柔軟な働き方がしやすい環境整備」、⑤「子育て介護等と仕事の両立」、⑥「外国人材の受入れ」、⑦「女性・若者が活躍しやすい環境整備」、⑧「格差を固定化させない教育の充実」、⑨「高齢者の就業促進」であり、多岐に渡って検討がなされていることが伺える。
さて、この「働き方改革」で検討されている幾つかのテーマは、このコラムを読んでいる多数派であろう各企業のシステム・セキュリティ担当者にとっては、既に身近なテーマではないだろうか。
特に、②「(前略)労働生産性の向上」、③「長時間労働の是正」、④「柔軟な働き方がしやすい環境整備」、⑤「子育て介護等と仕事の両立」の4つのテーマについては、私の経験上(情シス部門は他部署と比べても労働時間が長いという経験とシステム部署での業務経験)、システム部署には馴染深いテーマであると推察する。
例えば、②の労働生産性を上げるための取り組みは③の長時間労働の是正とセットで、上司より対策を求められている方もいれば、部下に対して残業時間を削減するように指示を出されている立場の方も多いだろう。また、④の柔軟な働き方がしやすい環境整備や⑤の子育て介護等と仕事の両立については、経営層や労務関連部署より、テレワークやモバイル対応などでシステム部署として対応を急ぐように迫られている方も多いのではないだろうか。
斯く言う私も、この「働き方改革」の渦に巻き込まれている一人である。特に今年に入ってから、社内の「働き方改革」を推進する各部署より、情報セキュリティ担当として意見を求められる機会が多くなった。
一方で私の「働き方改革」についての認識は、このコラムを執筆にするにあたり内閣府の関連するホームページを初めて閲覧する程度のレベルでしかなく、何か意見を言えるような立場ではない。
ただ、私なりにこの数年間、「長時間労働の是正」の一環として労働生産性の向上を目標にしてきた経緯もあり、多少なりともその効果を実感できるようになってきたこのタイミングで、僭越とは思いつつ労働生産性向上へ向けた普段の取組みについて参考までに紹介したい。
現在私は、情報セキュリティ室という部署に所属しており、主に自社や共同事業体の情報セキュリティ対策を企画・立案・実行が主要業務だ。そのような業務上の特性もあり、3年前まで所属していたシステム部署と比較して、経営層や利害関係者へのプレゼンテーションの機会が少なくはなく、資料の効率的な作成は自分自身の業務改善課題でもあった。
そこで、資料作成時の労働生産性向上に繋がったと実感できた対策を3つ紹介したい。
一つ目は、考える工程とパソコンに向き合って仕上げる(書き込む)工程を厳密に分けるようにした。これにより、パソコンに向かいながら思考する時間が大幅に減り、効率的に資料作成が出来るようになった。二つ目は、就業開始時間より1時間ないし2時間程度早めに出社して、朝の静かな時間を活用することだ。雑音もなく集中できるため、体感的には通常勤務時と比較して2倍以上のスピードで作業が可能となった。また、早めに出社した労働時間分は、同月内に時間代休として処理をし、実質的に所定労働時間内を超えないように工夫している。私の勤務先は1月が年度初めであるが、上半期は所定時間外での業務は実質的にゼロ時間で終わらせることができそうだ。三つ目は、先ほどの早朝出社と似た事例にはなるが、通常勤務時間でも可能な限り集中できる場所を確保している。幸いにも勤務先オフィスには三方が壁に囲まれた個別ブースがあり、集中力を必要とする場合はそのブースを利用して効率的に資料作成を行うことができる。
以上3点が私自身の労働生産性向上の取り組みである。要するに、働き方改革のためにシステムやツールを見直しすることも大事だが、「自分自身の働き方」を改善・改革する事で結果も見出すことができるのだ。もちろん、労働生産性をあげる方法は環境により異なってくる。会社のルールやその人の職位、あるいはシステムインフラなどの設備状況により、できる・できないはあるだろう。従って、ご紹介させて頂いた事例は、今後皆さんが「働き方改革」を推進していく上で、参考情報として考慮頂ければ幸いだ。
最後に、PCNW(「PC・ネットワークの管理・活用を考える会」の略)に皆さんにも是非参加して欲しい。そして、参加して得られるメリットを享受してもらいたい。なぜなら、私こそがこの会に参加したからこそ得られるメリットを享受している一人であるからだ。2012年に初参加以来5年間が経過したが、その間、2015年1月にシステム部門から情報セキュリティ部門へ異動となり、右も左も分からない時に支えになったのは、この会で知り合った諸先輩方や仲間からの数多くのアドバイスであった。これからは、恩返しも含めて新しい仲間も交えながら、持ちつ持たれつ会を盛り上げていきたい。
<お断り>
本稿の内容は著者の個人的見解であり、所属企業及びその業務と関係するものではありません。
吉田壮臣 |
サントリーパブリシティサービス(株) 情報セキュリティ室 主任 |
北海道生まれの関西育ち。趣味はスキー。
学生時代を京都で過ごす。社会人になってからは主にサービス業界での勤務経験が長く、8年程前からシステム部署に異動になってからこの世界の面白さに気付くことになる。
現在は情報セキュリティ室に所属し、情報セキュリティ対策の企画・立案・実行に奮闘する毎日。
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